『がらくた草紙』サークル:夜光採園 著者:椎名貴乃

『がらくた草紙』は色鮮やかな冊子が並んでいた夜光採園さんのブースで購入しました。このサークルさんの他の作品は購入していなかったのですが、ブログで確認したところファンタジックミステリーなども手掛けているとのことで、事前に調べておかなかったのが悔やまれます。青い表紙に和紙のような色合いの紙で外題が貼られた和綴じのようなお洒落な装丁ですが、驚くべきことにこのサークルさんの本はほとんどがインクジェットだということ。手製でこんな素敵な冊子が作れるのものなんですね。
作品の内容は、様々な古物が集まる九十九神社(ガラクタ神社)を営む兄妹が古物と共にやってくる謎を解き明かしていくというもので、いわゆる日常の謎に分類できるミステリーです。ただ、ミステリーと言うとまっさきに名探偵による論理的な解決を想起しがちですが、この作品の特色はむしろ、謎を解決した後に明らかになる当事者たちの姿が丁寧に描かれていることでしょう。古物を介した関係者同士のつながりや隠されていた心象が見えてくる様子は、散りばめられた謎が効果的なアクセントになっていて、読了後にどこか晴れやかな気分にさせてくれます。『庭つ鳥』と『此の花、咲く哉』の短編2作が入っていますが、特に日本神話と桜が印象的な『此の花、咲く哉』がおもしろかったです。