『幻影時代 人見広介怪奇短編集』 サークル:秘密結社【銀貨時計】著者:人見広介

 サークル名から既にミステリアスな雰囲気の漂う秘密結社【銀貨時計】で購入した作品です。この作品でまず目につくところと言えばその綺麗な装丁でしょう。著者の紹介を見るとこの作者の方が編集・デザインも手掛けているようですが、黒を基調にしたデザインやタイトルのフォントが怪し気な雰囲気を醸し出しており、内容にとてもマッチしていました。
 さて、その内容ですが、タイトルを見てわかるように、この作品は全編を通して江戸川乱歩のオマージュになっています。それも3編それぞれそれぞれ異なった語り口や雰囲気で書かれており、様々な乱歩のエッセンスを取り入れいているのだからすごい。仮面にとりつかれた収集家の末路を描く「仮面地獄」、真夜中に出会った男が不気味なユートピアの話を語りだす「ジオラマ王国の恐怖」、そしておなじみの怪人対名探偵「犯罪奇術王事件」。どれも文章から小道具まで凝っており、乱歩が好きな人には是非お勧めしたい作品です。個人的には結末まで上手にできている「ジオラマ王国の恐怖」が面白かったですが、読んでいて感慨深かったのは怪人の変態具合の再現度が尋常ではない「犯罪怪奇王事件」。少年探偵団にはまっていた小学生時代を思い出し、非常に懐かしくなりました。こんな変態紳士が怪人としてもてはやされた時代があったんですよね。