『樹海月異色短編集』 サークル:KSD有志@創作例会 著者:樹海月(きくらげ)

 KSD慶應義塾大学推理小説同好会)の有志の方が出しているサークルで購入しました、『樹海月異色短編集』。著者の樹海月(きくらげ)さんは他の奥付を見ると結構前から創作活動をなされているようで、前回の文学フリマにも参加したご様子。今回は慶応大学推理小説同好会さんは他にも評論のブースで参加しており、会場で新刊の『メフィスト賞全レビュー』をいただきました。ありがとうございます。そちらの方の感想もいずれ書こうと思います。
 さて、作品の感想ですが、表紙に「問おう、果たしてこれはミステリーなのか」と書かれているように、非常に個性的な作品が集まった短編集です。その中でも特に印象に残った作品を上げるのならやはり「銭湯の怪死事件」でしょう。一応海野十三の「電気風呂の怪死事件」をモチーフにしているようですが、内容は問答無用の馬鹿ミスです(「電気風呂の怪死事件」も今読めば十分馬鹿ミスですが)。どのくらい馬鹿ミスかと言えば、女装好きの少年探偵をはじめとする登場人物に、トリック、真相、とどれをあげても非の打ちどころのない馬鹿ミスで、文章も上手くすらすら読めました。他にもホラー風味の「さざめざく」やシュールな「尻」といった作品もありまさに異色の名に恥じない短編集だったと思います。それぞれの作品のタイトルにある写真もシンプルでありながら作品の雰囲気をよく表していてよかったです。そう言えば、この著者の方は他の短編集『どうしてこうなった!』でもボンクラな少年が女装して製糸工場で働く話を書いてましたが、女装少年が好きなのでしょうか。(N川)
こちらは作者の樹海月さんのHP「くらげの天ぷら」です。HPでも小説を公開しているので、さっそく読ませていただきます。
http://www.geocities.jp/kikuties/top.html

『幻影時代 人見広介怪奇短編集』 サークル:秘密結社【銀貨時計】著者:人見広介

 サークル名から既にミステリアスな雰囲気の漂う秘密結社【銀貨時計】で購入した作品です。この作品でまず目につくところと言えばその綺麗な装丁でしょう。著者の紹介を見るとこの作者の方が編集・デザインも手掛けているようですが、黒を基調にしたデザインやタイトルのフォントが怪し気な雰囲気を醸し出しており、内容にとてもマッチしていました。
 さて、その内容ですが、タイトルを見てわかるように、この作品は全編を通して江戸川乱歩のオマージュになっています。それも3編それぞれそれぞれ異なった語り口や雰囲気で書かれており、様々な乱歩のエッセンスを取り入れいているのだからすごい。仮面にとりつかれた収集家の末路を描く「仮面地獄」、真夜中に出会った男が不気味なユートピアの話を語りだす「ジオラマ王国の恐怖」、そしておなじみの怪人対名探偵「犯罪奇術王事件」。どれも文章から小道具まで凝っており、乱歩が好きな人には是非お勧めしたい作品です。個人的には結末まで上手にできている「ジオラマ王国の恐怖」が面白かったですが、読んでいて感慨深かったのは怪人の変態具合の再現度が尋常ではない「犯罪怪奇王事件」。少年探偵団にはまっていた小学生時代を思い出し、非常に懐かしくなりました。こんな変態紳士が怪人としてもてはやされた時代があったんですよね。

文学フリマお疲れさまでした。

ずいぶんと経ってしまいましたが、改めまして第九回文学フリマお疲れさまでした。
おかげさまで筑波大学推理小説研究会の新刊「Chaos vol.2」は完売できました。
編集にかかわった方、原稿を書いた方、ベランダにぶら下がった方、当日売り子をした方その他大勢の方のお力で今回も無事「Chaos」発行、販売ができました。本当にありがとうございました。

さて、ここからが本題なのですが、今回の文学フリマでは私の方でも出店している作品の中でミステリというジャンルに意識を向けまして、ミステリ(あるいはその周辺)の傾向の作品は大体集めることができました。今ざっと見ただけも約20冊ほどあります。この作品をただ読んで楽しむのも結構なのですが、商業誌と比べものにならないほど読者と作者の距離が近接している文学フリマというイベントで手に入れたものですので、それだけではいささか勿体ない気がしまます。そこで、このブログでは私が第九回文学フリマで手に入れたミステリ関連の作品を小説・批評などを問わず、感想、紹介文のようなものを載せていきたいと思います。なにぶん量がありますので、はたして全てを書くことができるのか甚だ不安ではありますが、どうかよろしくお願いします。   
Chaos 編集長    

このページについて

こっそりと仮公開。当ページは、筑波大学推理小説研究会(TMC)の非公式ブログです。そのうち公式になるはず。
第9回文学フリマの報告を行いたいというChaos編集長Nの要請を受けて、わたし木下が開設しました。

きっとそのうちいろいろ記事が書かれるよ!