また文学フリマのリスト(ミステリー関連)を作ってみました。

お久しぶりです。前回の更新からすっかり間が空いてしまいました。
さて、6月12日(日)に開催される「第十二回文学フリマ」に筑波大学推理小説研究会も参加しますが、今回も第十二回文学フリマでミステリー関連の作品を配布すると思われるサークルをまとめてみました。文学フリマに参加される方のご一助になれば幸いです。
作成方法は前回と同じで、サークル一覧のキーワードにミステリー・探偵小説といった単語を掲げているサークルさんを集めただけです。一口にミステリーといっても内容は一様ではありませんので、詳細はそれぞれサークルさんのHP等でお確かめしていただけければ幸いです。
今回は紹介文・告知等を元に配布物・作品の傾向についても可能な範囲で記載しておりますので参考にしてみてください。新しい情報が入りましたら随時更新する予定です。
とりあえず、現在把握しているのは34サークル(小説31、評論3)になります。誤字脱字や見逃し等がありましたらご指摘お願いします。

以下宣伝。
筑波大学推理小説研究会ではサークルスペース【G-20】にて『Chaos vol.4』の配布を予定しております。
『Chaos vol.4』では本格ミステリ大賞全作レビュー及び『『瑠璃城』殺人事件』のトリック実演等といった企画や褒め殺し書評、創作などを掲載予定です。
興味がある方は是非お立ち寄りくださいませ。



第12回文学フリマ、ミステリー関連リスト 最終更新6月10日

ア-17 東京大学新月お茶の会  website猫又通り
>創作小説を中心とした『月猫通り』を頒布/ジャンルも多岐に渡り、SF、ミステリ、ファンタジーなど様々
新刊:『月猫通り 2132号』(特集テーマは、「新四大奇書」・テーマ小説は「地下帝国」、文フリ販売は30冊程度)価格:600円


イ-01 石窯  website石窯派有志の会
本格ミステリを扱っています/新刊:石窯第四号/既刊は三号が若干数
新刊:『石窯 第四号』(掲載作品「聖域を作りし魔物」優騎洸・鮎川哲也賞最終候補)価格:500円
*ゲーム業界四コマ冊子付きで600円(四コマ冊子単独の提供は不可)


ウ-08 黒死館附属幻稚園   website黒死館古代時計室
小栗虫太郎黒死館殺人事件」を様々な角度から取り上げる同人誌「黒死館逍遥」は現在12号まで刊行中
発行誌:『黒死館逍遥』


エ-10 探偵小説研究会  website探偵小説研究会
>機関紙『CRITICA』5号/柄刀一氏も参加した北大シンポジウム収録の「現代本格の状況」特集と、昨年生誕120年を迎えたクリスティー特集の二本立て
既刊:『CRITICA 5号』 価格:1500円
既刊:『市川尚吾作品集』 価格:1000円


C-07DAISY CHAIN 制作委員会  websiteDAISY CHAIN
>実力派のエンターテイメント文藝誌/がっちり読めるエンタメ小説を、イラスト・マンガが彩ります/新刊は500円・バックナンバーも有り
新刊:『DAISY CHAIN vol.08』(twitter@daisy_label)にて作品紹介)価格:500円


C-16らいおんの屋台  websiteらいおんの屋台
>「人力検索はてな」で、ハンドル名 lionfan で発表したクイズ集/前回、販売した第1作「B美と愉快な仲間たち」の残部と、新刊(続編)を販売/「お約束占い」「ミューザック小説」「ミニマルデザイン・クイズ」「バグチャット・クイズ」など、斬新な小説風クイズ
新刊:『B美と愉快な仲間たち 2』(30部)価格:500円
既刊:『B美と愉快な仲間たち』(5冊程度)価格:500円


D-15無限遠  website文芸実験サークル「無限遠点」
発行誌:『ミステリの絵本』


D-17Sept Rivieres  websiteSept Rivieres/永河光のオフィシャルサイト
ケイブ社の課金コンテンツで3年半に渡って連載された『聖学少女探偵舎』という作品を、同人でノベルゲーム化し頒布


F-03戯言製造∀級機関  website戯言製造∀級機関 
>個人誌販売/Bernstein:連続殺人ミステリ短編・前回の加筆修正再販を行います。Re:fam:忘却という救済と断罪。貴方の忘れたいモノはなんですか?by忘れさせ屋


F-04missing garden
>ヨーロッパを舞台にした、絵画がキーとなるミステリーもどきを発行予定


F-12あとりえSKYFiSH  websiteあとりえSKYFiSH
>NY市警を舞台にした小説をメインに、コージー・ミステリー、ファンタジー小説など/二次創作(健全)も取り扱い多数
新刊:『タウンズゲートのジェムストール』(オリジナル、5篇からなるオムニバス・ストーリー)


F-14夜光採園  website夜 光 採 園
>「猫と琥珀と毒草園」シリーズの他に、神社が舞台の古物ミステリー「がらくた草紙」等
新刊:『聖なる夜に咲く花は』(「猫と琥珀と毒草園」シリーズ第7弾)価格:900円


F-15オーダーメイド  websiteオーダーメイド
>記憶の買取・販売業を営む青年の物語「Remember me?」シリーズ。ほか、純文学系の恋愛小説や猫をテーマにしたミステリーを発行
新刊:『毒草園に咲く花は』(夜光採園様の「猫と琥珀と毒草園」シリーズの番外編)予価:200円


G-17ワセダミステリクラブ  websiteワセダミステリクラブ
>前回より大幅にボリュームアップした『ミステる3.0』を頒布する予定
新刊:『ミステる3.0』
委託:『Workbook95、96 境界線上のSF(上・下)』(京都大学SF・幻想文学研究会ブログに詳細掲載)


G-18Anonymous Bookstore  websiteAnonymous Bookstore
>▼美少女バカ本格推理『カルテット・ダンス』(1〜4巻)▼長編本格推理『町に歌姫が来た日』(読切)▼女子高サイエンスミステリ『こちらスノーホワイト科学分析部』(読切)


G-19エアミステリ研究会  websiteエアミス研同人誌広報@wiki
>「非実在探偵小説研究会〜AIRMYS〜 壱号」を発行/創作短編、評論、漫画とミステリ絡みの作品をいろいろ収録予定。(エロミス研によるリレー小説もあるよ!)
「零號」は文フリ購入予約受付中。残数僅かとのこと
新刊:『Airmys非実在探偵小説研究会1号 』(サイトにサンプルあり)価格:800円


G-20筑波大学推理小説研究会  website筑波大学ミステリー研究会公式頁
> 評論、企画、小説、と前号よりも更にカオスな冊子をお届けする予定
新刊:『Chaos vol.4』(本格ミステリ大賞全作レビュー及び『『瑠璃城』殺人事件』のトリック実演等)


H-04クーロンパンダ  websiteクーロンパンダ旧サークル名「S.L.S.」
>新作多数の予定です。探偵のアレとか、学園が舞台の何かとか、前回ポシャったアレとか……
新刊:『密室探偵演技』(ブログに冒頭部分サンプルあり)価格:300円前後 
新刊:『パフェから始まる恋』


H-06S.Y.S.文学分室
>堺屋はミステリ作品を、ソラミロは短編無料冊子を携えて参加


H-07M×H・P   websiteM×H.P
>前回出典した作品に加え、新たなフリーのショート・ミステリー集と、ホラー系連作短編小説集『白い街/黒い町/灰の森』を出す予定
新刊:『灰の森』(短編連作小説、推理要素とブラックな童話)価格300円


H-08明治大学ミステリ研究会  website:明治大学ミステリ研究会
>MMC有志による『立体交差 Vol.2』。今回は、郊外のショッピングモールを舞台に、様々な事件が勃発します。/篠澤寄夫『まっすぐ帰れ』(第7回ミステリーズ!新人賞最終候補作)の冊子版を再販する予定
『一年生には荷が重い』(第二十一回鮎川哲也賞最終候補作)も頒布予定(公式ブログより)
新刊:『立体交差 Vol.2』(「ショッピングモール」を舞台にした競作特集)


H-10Quantum EDiter  websiteQuantum Electrical Device
既刊:『EquaL - 迷宮の国のアリス -』(アリスシリーズ全4巻)
既刊:『積読にいたる病』
*突発本を出す予定

I-08簾餅  websiteどこそこともなく
>全四巻の学園モノ「ケンブンミルキ!」と、少し不思議な次の三部作……の前日談「秒速一秒」を配布
新刊:『秒速一秒』(次シリーズの前日談)価格:200円


P-13 幻奏華  website:幻奏華 秀澄語り
>中世・近現代の時代的な背景を素材にして、人間心理の闇を追求する作品が多め/ナポレオン時代の恋愛劇再刊と一次大戦物で新刊予定
新刊は延期、サイトのOFFLINE NOVELSページにある既刊を販売


P-14(迷)にゃにゃにゃにゃんず  website:(迷)にゃにゃにゃにゃんずHP
>オリジナルの挿絵付きライトノベル的な何かを頒布予定でござます/とっても中二ななんちゃってミステリアクション


Q-04恋人と時限爆弾  website Narihara Akira 【恋人と時限爆弾】
>100年以上前のアメリカで、純文学作家キャザーによって書かれたBL小説『ポールの場合』を、翻訳家・柿沼瑛子先生の監修で翻訳、その背景と論文を収録した本を販売/その他、新作百合もの、既刊推理小説電子書籍などの販売も予定
新刊:『指輪』


Q-09 n_f_nost  website:「つやこ」のプロフィール(pixiv)
幻想小説。日常に潜む不思議な話。どちらかといえば女性向け。BL、ミステリー、を含む作品も有。


T-14萌えるアジア  website萌えるアジア
>「この台湾ミステリーがすごい!」「萌えるタイ読本」など、アジア情報の同人誌
既刊:『この台湾ミステリーがすごい! 2010』(まるごと一冊台湾ミステリー小説のガイドブック)価格600円


O-07秘密結社【銀貨時計】   website秘密結社《銀貨時計》
>サークル初の機関誌「筺庭倶楽部」を新刊に、各個人本の既刊を販売/幻想小説怪奇小説、幻想怪奇


O-09蛆虫プロダクション  website蛆虫プロダクション
>殺人映画批評をさらにパワーアップした増補版に加えて、新刊の死体映画批評も発売


O-11イシイアキヒト  websiteパキ夫 さんのページ
>いつも通り短編小説を出します


O-12aBre   websiteaBre会合あらため あぶれん坊!万歳
>「読み応え第一主義」エンタメ文芸誌 
新刊:『aBre Vol.5』(ブログに詳細掲載)価格:100円


O-13Nth Library  websiteNth Library
>目指せ!純文学/青春百合ミステリの思索部シリーズの新刊も刊行
既刊:思索部シリーズ


M-17ぷよまん
>メンバーのだしたお題に元に他のメンバーが作品を創るシャッフル企画を中心にお届け/ミステリー・SF・逆ハーレムなど多彩なジャンルでお届けします

文学フリマのリスト(ミステリー関連)を作ってみました。

お久しぶりです。さて、5月23日(日)に開催される「第十回文学フリマ」に筑波大学推理小説研究会も参加しますが、今回は第十回文学フリマでミステリー関連の作品を配布すると思われるサイトさんをまとめてみました。
作成方法は単純で、サークル一覧のキーワードにミステリー・探偵小説といった単語を掲げているサークルさんを集めました。リストを作成するにあたって配布物の内容等については吟味をしておりませんので、サークルさんのHP等でお確かめしていただけければ幸いです。
とりあえず、現在把握しているのは26サークル(小説24、評論2)になります。間違いや見逃しがありましたらご指摘お願いします。
具体的な配布物についてはまだ不明のところが多いので、確認できたら上げようと思います。
ちなみに筑波大学推理小説研究会では「Chaos vol.3」の配布を予定しておりますので、興味がある方はぜひお立ち寄りください。


A-01 あとりえSKYFiSH HPあとりえSKYFiSH / SKYFiSH Artworks
A-08 LOSSTIME
A-19 汀こるもの HPhttp://korumono.blog.eonet.jp/
A-20 天帝小説研究会 HPhttp://www20.atwiki.jp/mahorowiki/
B-14 戯言製造∀級機関
B-20 (迷)にゃにゃにゃにゃんず HPhttp://nya4.moryou.com/index2.html
C-09 ワセダミステリクラブ HPワセダミステリクラブ
C-10 Anonymous Bookstore HPhttp://members3.jcom.home.ne.jp/yu_ichikawa/mys/
C-11 Nth Library HPKoto-pinion
C-12 首都大学東京推理小説研究会 HPhttp://it-is-too-mystery.hp.infoseek.co.jp/
C-13 KSD有志@創作例会
C-14 筑波大学推理小説研究会 HP筑波大学ミステリー研究会公式頁
D-01 Quantum EDiter HPQuantum Electrical Device
D-02 雲上回廊 HP雲上回廊
D-07 簾餅 HPどこそこともなく
D-11 夜光採園 HP–éŒõÌ‰€
D-20 秘密結社【銀貨時計 HP秘密結社《銀貨時計》
F-16 北江アトリエ 
K-02 S.L.S. HPクーロンパンダ
L-09 地蔵出版 HP地蔵出版 
L-11 aBre HPあぶれん坊万歳!!
N-07 石窯 HP石窯派有志の会
N-10 無限遠点 HP文芸実験サークル 無限遠点 ホームページ
N-12 活動漫画屋 HP人形城奇譚
U-06 黒死館付属幻稚園 HP黒死館古代時計室
T-14 探偵小説研究会 HPhttp://www.geocities.co.jp/tanteishosetu_kenkyukai/

初野晴先生インタビュー掲載予定
刮目して、待て!!!


とかっこいい宣伝ができればよいのですがなかなか難しいものです。


上に書いたとおりに次回のAns27号では初野晴先生インタビューと著作全レビューを掲載する予定です。
内容は未だ秘密ですが初野先生にはかなり濃ゆいものから小説の技法までとヴァラエティに富んだ質問に答えていただきました。


Ans27号は新入生歓迎祭で配布予定です。
また後日インタビュー部分だけPDFにしてWeb Ansに載せるようなのでつくばに来れない方もご安心ください。



以上ミス研の窓際会員義男からの報告でした。

『清龍第八号』 サークル:清龍友之会

常連と言いますか老舗と言いますか、文学フリマで何度も見かけたことのあるサークルさんには内容は言うに及ばず、装丁まで凝っている作品が多々あります。その中でもこの清龍友之会さんが発行する『清龍』は別格でしょう。『清龍』の書影は清龍友之会さんのHPに掲載されていますが、見てわかるようにどれも同人ならではのパロディが詰まっており、ミステリファンなら思わず手にとってしまう装丁になっています。さて、そんな『清龍』の最新号『清龍第八号』ですが、ポプラ社から発行された江戸川乱歩『電人Q』のパロディになっています。会場に置いてあった『電人Q』と見比べましたが、本当にそっくりでした。こんな技術と遊び心を持っている作品は読んでいて本当に楽しいです。
 内容もさすがにカタログで本格推理を掲げているだけあって、全体を通して上手い、面白い作品が載っています。「紋章学研究会の失恋」は6号に掲載されていた「紋章学研究会の狂騒」の続編で、チョコレートを巡る謎への論理合戦が楽しめます。また今号はミステリー以外にもSF、ホラーとラインナップも豊富でした。更に恒例となったテーマ競作、今回は自転車ということでしたが、短時間でオチまでしっかり書ききるところがすごい。特に作品では、自転車のひょうきんな語り口とオチのうまさがマッチしている「自転車が恋を語る話」が面白かったです。

 慶應義塾大学推理小説同好会さんが発行した『Casebook メフィスト賞全レビュー』は文学フリマ当日に同サークルの方からいただきました。どうもありがとうございます。この作品はタイトル通り講談社メフィスト賞受賞作を全てレビューした労作であり、まずメフィスト賞を網羅したという精根がすごいです。私自身メフィスト賞制覇については既に幾度も挫折を経験した身ですが、この作品を読むとやはりもう一度挑戦してみたくなりますね。それと読んで驚いたのがこのレビュー書き手の多さです。詳しく集計してませんがざっと見ても20名以上の人が執筆しており、これだけ多くの人が携わった作品というのも大学サークルでは珍しいのではないでしょうか。執筆陣の厚さは内容にもしっかり反映しており、受賞作のみならず、その作家のほかの作品に言及されていたり、考察が行われていたりと受賞作ごとに様々な情報が取り入れられていますし、書き手によっては個性的な文章で批評する人もいるので、ただ読むだけでもおもしろいです。メフィスト賞は未読の作品も多々あったのですが、ネタバレなどにも留意しており、ありがたい作品紹介になっています。割と書き手の感想も素直に書かれており、作品によってはつまらない、とばっさり斬っている作品もありましたが、玉石金剛と言われているメフィスト賞の内実をよく表したレビューだと思いました。

今回読んだ作品はサークルman/chickenさんの発行する『F_O_A_F_#01』はミステリーとは趣を異にした怪談風の掌編集です。タイトルのFOAF(フォアフ)とはFriend Of A Friend(友達の友達)の略だそうで、噂話、怪談におなじみの「友達の友達が体験したんだけど」という前置きを意味するそうです。このタイトルが表すように、『F_O_A_F_#01』には都市伝説のようなホラー風味の作品もあれば、ぞっとするような内容でもないのに名状しがたい不安な気分にさせられる作品もありました。収録されている作品は『ネタ出品』、『親切』、『サイキックバトル』、『蚊』、『夕暮れの人影』、『人身事故』、『イノシシ』の7本。どれも2〜3ページ程度の掌編なので簡単な内容を紹介しただけでネタバレになってしまいますが、個人的に面白かったのは、『サイキックバトル』と『夕暮れの人影』でしょうか。どちらもはっきりとした真相のような部分が語られておらず、怖いというよりも、なんというか、思わず周囲に誰もいないか確認したくなるような、そんな不安を覚える作品です。怪談本などに類出する都市伝説は大抵が語り慣れてしまっていて、起承転結のような物語の枠組みがはっきりしたものが多い気がしますが、逆にこういった物語未満の「話」(と著者の方は冒頭で述べています)というのも怪談として成立するのですね。

『がらくた草紙』サークル:夜光採園 著者:椎名貴乃

『がらくた草紙』は色鮮やかな冊子が並んでいた夜光採園さんのブースで購入しました。このサークルさんの他の作品は購入していなかったのですが、ブログで確認したところファンタジックミステリーなども手掛けているとのことで、事前に調べておかなかったのが悔やまれます。青い表紙に和紙のような色合いの紙で外題が貼られた和綴じのようなお洒落な装丁ですが、驚くべきことにこのサークルさんの本はほとんどがインクジェットだということ。手製でこんな素敵な冊子が作れるのものなんですね。
作品の内容は、様々な古物が集まる九十九神社(ガラクタ神社)を営む兄妹が古物と共にやってくる謎を解き明かしていくというもので、いわゆる日常の謎に分類できるミステリーです。ただ、ミステリーと言うとまっさきに名探偵による論理的な解決を想起しがちですが、この作品の特色はむしろ、謎を解決した後に明らかになる当事者たちの姿が丁寧に描かれていることでしょう。古物を介した関係者同士のつながりや隠されていた心象が見えてくる様子は、散りばめられた謎が効果的なアクセントになっていて、読了後にどこか晴れやかな気分にさせてくれます。『庭つ鳥』と『此の花、咲く哉』の短編2作が入っていますが、特に日本神話と桜が印象的な『此の花、咲く哉』がおもしろかったです。